前回は、手段が目的になってしまうと、現場がおかしくなるという話をしました。
本来は、何かを実現するために手段があります。
ところが、時間が経つにつれて、いつの間にか「その手段を守ること」そのものが目的になってしまうことがあります。
では、そうならないためには、どうすればよいのでしょうか。
私は、もう一度「現場」に戻ってみることが必要だと思います。
なぜなら、現場は理論を実際に試す場所だからです。
理論は、現実から生まれる
理論は、現実を説明するためにつくられます。
こうすれば、こうなる。
この条件なら、こう動く。
この方法なら、この問題を解決できる。
さまざまな経験や知識を整理して、一定の考え方にまとめます。
制度も同じです。
ある問題が起きたから、それを防ぐための仕組みをつくります。
最初には、必ず何らかの目的があります。
しかし、その仕組みを実際に使ってみると、理論や制度をつくったときには想定していなかったことが起こります。
そこに現場があります。
現場に置くと、見えなかったものが見えてくる
例えば、机の上では、とても合理的に見える仕組みがあったとします。
誰が見ても、
「これならうまくいく」
と思える仕組みです。
ところが、実際に現場で使ってみると、なぜかうまくいきません。
現場から、
「この方法では難しい」
という声が上がります。
このとき、
「現場の人が理解していない」
「現場が決められたことを守っていない」
と考えることもできます。
しかし、もう一つの見方があります。
「理論のほうに、まだ見えていない条件があるのではないか」
という見方です。
現場は、その見えていなかった条件を教えてくれます。
理論と現実の間には、必ず差がある
現場には、理論に書かれていないものがあります。
・天候
・人の経験
・設備の状態
・材料の違い
・時間的な制約
・取引先との関係
そして、その日にしか起きない小さな変化もあります。
理論をつくるときには、それらを一定の条件として整理します。
しかし、現実は毎回同じではありません。
だから、
「理論ではこうなるはずだ」
という結果と、
「実際にはこうなった」
という結果の間に差が生まれます。
その差は、失敗として片付けるものではありません。
理論をもう一度考えるための材料になります。
「おかしい」は、重要な情報である
現場から出てくる「何かおかしい」という感覚も同じです。
それは単なる不満かもしれません。
しかし、理論では説明できていない何かを示している場合もあります。
だからこそ、
「なぜおかしいのか」
を見る必要があります。
どこで理論と現実がずれているのか。
何が想定されていなかったのか。
どんな条件が抜けていたのか。
そこを確認することで、初めて問題の本質が見えてきます。
建設現場では、もっと分かりやすくなる
現場は、理論を否定する場所ではありません。
理論が本当に機能するのかを検証する場所です。
建設現場を考えてみても、同じことが言えます。
・図面
・工程表
・安全基準
・施工手順
どれも必要なものです。
しかし、実際に現場に入ってみると、図面どおりには進まないことがあります。
そこには、図面をつくった時点では見えていなかった条件があります。
既存の建物との関係かもしれません。
地盤の状態かもしれません。
周囲の環境かもしれません。
作業する人の経験や技術の違いかもしれません。
だからといって、現場の判断だけで勝手にやり方を変えればよいということでもありません。
大切なのは、
「なぜ計画どおりにいかないのか」
を確認することです。
その原因が分かれば、次の計画に反映できます。
つまり、現場で起きたことが、次の理論や計画をつくる材料になります。
現場から、もう一度仕組みを見る
これは建設だけの話ではありません。
会社の経営でも同じです。
新しい制度をつくります。
新しい営業方法を導入します。
新しい仕組みをつくります。
最初は、一定の考え方に基づいて設計されています。
しかし、実際に運用すると、想定していなかった問題が出てきます。
そのとき、
「現場が悪い」
と考えてしまえば、そこで終わります。
しかし、
「なぜ、この仕組みではうまくいかなかったのか」
と考えれば、次の改善につながります。
現場から得られた情報によって、理論や仕組みそのものを修正できます。
理論と現場は、行ったり来たり
考えてみれば、科学も同じです。
仮説を立てます。
実験します。
結果を確認します。
予想と違えば、もう一度考えます。
そして、また試します。
理論だけを見ていても、それが現実に通用するかどうかは分かりません。
実際に現実と照らし合わせることで、理論の有効性が確認されます。
現場も、それと同じ役割を持っています。
理論を実行するだけではありません。
理論を現実に照らして確認する場所でもあります。
そして、また理論に戻る
そう考えると、現場と制度は対立するものではありません。
制度が現場を支える。
現場が制度を検証する。
そして、現場から得られた情報をもとに、制度が修正されます。
この循環が続けば、仕組みは少しずつ現実に近づいていきます。
逆に、この循環が止まってしまうと、制度だけが残ります。
最初は意味があった手段が、いつの間にか目的になります。
そして、
「決まっているから」
という理由だけで、その手段が守られるようになります。
前回の話に戻ります。
手段が目的になったとき、現場がおかしくなります。
だからこそ、現場からもう一度、理論や制度を見直す必要があります。
何のためにやっているのか
「これは、何のためにやっているのか」
「この方法で、本当に目的を達成できているのか」
「現場で起きていることを、今の理論は説明できているのか」
こうした問いを持つことが大切です。
理論が現場を導きます。
そして、現場が理論を検証します。
どちらか一方だけでは、仕組みは完成しません。
理論と現場を行き来することで、初めて現実に合った仕組みになっていきます。
だから私は、現場を見ることが重要だと考えています。
現場には、理論だけでは見えないものがあります。
そして、その中にこそ、次の仕組みをつくるための材料があります。
現場は、理論を実行する場所だけではありません。
理論を検証し、次の理論を生み出す場所でもあるのです。
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※ この記事は、合同会社正進(メディア事業)の経験と、現場での考察に基づくものです。正進の母体である正進総合保険企画(2004年開業・損害保険代理店)の知見も含まれますが、建設業に関する専門的な技術的助言ではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。

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