前回まで、私たちは「現象をどのように捉えるか」について考えてきました。
目の前で起きていることを、そのまま受け取るのではなく、条件をそろえ、繰り返し確かめる。
そうすることで、現象の中にある一定の関係が見えてくる。
しかし、ここにはもう一つ、注意しなければならないことがあります。
それは、
手段が、いつの間にか目的になってしまうことです。
チェックリストは安全そのものではない
例えば、安全のためにチェックリストを作ったとします。確認すべき項目を整理し、作業前に一つずつ確認する。これは、安全を確保するための有効な手段です。
ところが、しばらくすると、
「チェックリストにすべてチェックが入っているか」
ということが重要になってくる。
チェック欄はすべて埋まっている。
書類も残っている。
しかし、現場には別の危険が残っている。
そんなことが起こり得ます。
なぜでしょうか。
チェックリストは、安全そのものではありません。安全を確保するための手段の一つだからです。
現場だけの問題ではない
これは建設現場に限った話ではありません。
会社の規則。
行政の手続き。
品質管理。
教育。
医療。
さまざまなところで、同じ構造を見ることができます。
規則を守ることが重要になる。
書類を完成させることが重要になる。
記録を残すことが重要になる。
試験の点数を上げることが重要になる。
もちろん、それぞれには意味があります。
規則も、手続きも、記録も、チェック項目も、必要だから存在しています。
問題は、それを実行したことと、本来の目的を達成したことが、同じ価値として扱われ始めたときです。
「なぜ、この条件なのか」
現場では、ときどき不思議なことが起こります。
「決められたとおりにやっているのに、なぜかうまくいかない。」
そのとき、「もっときちんとルールを守ろう」という方向に進むことがあります。
しかし、本当に必要なのは、ルールを増やすことではないかもしれません。
その前に、「そもそも、このルールは何のためにあるのか」と問い直してみる。
ここが重要になります。
異なる現象に、同じ構造を見る
大統一理論という言葉からは、物理学の非常に大きな理論を想像します。異なる現象を、一つの考え方で説明しようとする。もちろん、現場の問題を物理学の理論で直接説明しようという話ではありません。
ただ、「個別の現象の奥に、共通する仕組みがないか」と考える姿勢には、共通するものがあります。
チェックリストの問題も、行政手続きの問題も、会社の規則の問題も、別々に見えて、実は同じ構造を持っている可能性があります。
目的のためにつくられた手段が、いつの間にか目的そのものになる。
これもまた、さまざまな現場に現れる一つのパターンです。
条件を守ることと、目的を果たすこと
だから現場を見るとき、
「条件を守ったか」だけではなく、
「その条件は、何のために存在するのか」を考えてみる。すると、今まで見えていなかったものが見えてくることがあります。
書類は完璧なのに、なぜか事故が減らない。
規則は増えたのに、現場の負担だけが増えている。
手続きは正確なのに、本来の目的から遠ざかっている。
こうした違和感は、単なる「現場の不満」ではありません。
そこには、制度と現場のズレが表れているのかもしれません。
違和感は、変化の入口になる
そして、そのズレを見つけることは、現場を変える最初の一歩にもなります。
正進メディアでは、これからも、目の前にある「当たり前」を少しだけ離れて眺めてみます。
そこには、なぜそうなっているのか。そして、別の見方をすれば何が見えてくるのか。
現場には、まだ多くの理由が積み重なっています。
どれほど筋の通った理論でも、現場で確かめられなければ、それはまだ仮説にすぎません。
次回は、「現場は、理論を検証する場所である」という視点で考えてみます。
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※ この記事は、合同会社正進(メディア事業)の経験と、現場での考察に基づくものです。正進の母体である正進総合保険企画(2004年開業・損害保険代理店)の知見も含まれますが、建設業に関する専門的な技術的助言ではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。


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