大統一論と現場技術③ 技術は「目的」から生まれる テーマ:道具には必ず目的がある

現場の構造

前回、私たちは「再現性」について考えました。

現象を客観的に捉えようとすると、同じ条件で確かめる必要が出てきます。

温度、時間、材料、方法など、できるだけ条件をそろえることで、同じ現象がもう一度起こるのかを確かめる。

再現性を高めるために、人は「条件」をつくり始めます。しかし、ここで一つの問題が出てきます。

条件をそろえることは、簡単ではない。

人間が毎回まったく同じ動作をすることはできません。自然の環境も、毎回同じではありません。

そこで人は、条件を一定にするための方法を考えます。

一定の温度を保つ。

一定の力を加える。

一定の長さを測る。

一定の時間を計る。

そのために、さまざまな道具や技術が生まれてきました。

では、技術はなぜ生まれるのでしょうか。ここで、もう一つ前のところまで戻って考えてみます。

「こうしたい」が技術を生む

道具を見ていると、私たちは、「これは何ができるのか」と考えます。しかし、本当はその前に、「何をしたかったのか」があります。

重いものを持ち上げたい。

遠くまで運びたい。

高い場所まで届かせたい。

正確に測りたい。

同じ結果を何度も得たい。

つまり、人間の力だけでは難しいことを実現したい。

そこには、まず「こうしたい」という目的があります。その目的を実現するために、人は方法を考えます。そして、その方法を形にしたものが、道具であり、技術です。

つまり、目的が先にあり、技術はその後に生まれる。これは、②で考えた「条件」ともつながっています。

再現性を高めたい。そのために条件をそろえたい。しかし、人間だけでは条件を一定にすることが難しい。

そこで、その目的を実現するための技術が必要になる。技術は、目的から生まれてくるのです。

道具には「理由」がある

例えば、ハンマーがあります。

ハンマーは物を叩くための道具です。しかし、「物を叩くためにハンマーがある」だけでは、少し説明が足りません。なぜ、人は手で叩くのではなく、ハンマーを使うのでしょうか。

手では十分な力を加えられない。

あるいは、力を効率よく伝えることが難しい。

そこで、人間の手よりも効率よく力を伝える形をつくる。

それがハンマーになります。

スコップも同じです。

土を掘り、すくうという目的がある。

そのために、人間の手とは違う形が必要になる。

クレーンも同じです。もちろん人の手では、ケガや汚れのリスクも避けられません。

人間の力だけでは動かせないものを、別の方法で動かしたい。

その目的から、機械が生まれます。

こうして見ると、道具の形には、それぞれ理由があります。

道具は、目的を実現するために形づくられている。だから道具を見ることは、その道具を必要とした人間が、「何を実現したかったのか」を考えることでもあります。

しかし、道具には「使える条件」がある

ここで、もう一つ考えなければならないことがあります。

技術があれば、何でもできるわけではありません。どんな道具にも、それを使うための条件があります。

クレーンなら、吊り上げる能力だけでは決まりません。

地面の状態。

風。

作業する空間。

周囲の建物。

人や車の動き。

さまざまな条件が関係します。

精密な測定器なら、温度や振動など、測定する環境そのものが結果に影響することもあります。

つまり、道具には「使える条件」がある。そして、その条件の外側には、「環境」があります。

環境が、技術に限界を与える

技術は、人間がつくったものです。しかし、それを使う環境まで、人間の都合に合わせて変えられるとは限りません。

雨が降る。

風が吹く。

地面が軟らかい。

気温が高い。

作業する場所が狭い。

周囲を人や車が通る。

自然や社会の環境は、こちらの計画どおりには動いてくれません。そのため、どれほど優れた道具であっても、環境によって使えないことがあります。

ここで重要なのは、「技術には、必ず限界がある」ということです。その限界は、技術そのものの性能だけで決まるわけではありません。技術を使う「環境」によっても決まります。

だから人は、限界に出会うと、また考えます。

「どうすれば、できるのか。」

条件を変える。

方法を変える。

別の道具を使う。

あるいは、新しい技術をつくる。そこにはまた、そこにはまた、「どうすれば実現できるか」という新しい課題が生まれます。

現場では、目的と技術と環境が重なっている

建設現場を考えてみると、この関係がよく分かります。

何かを建てたい。その目的のために工法を選ぶ。工法に合わせて機械や道具を使う。そのための条件を整える。

しかし、現場には地形があります。

天候があります。

周囲の建物があります。

道路があります。

人や車の流れがあります。

そして、そこで作業する人間がいます。

同じ工法、同じ機械を使ったとしても、現場が変われば条件も変わります。条件が変われば、判断も変わります。

だから現場では、「この技術を使えばよい」だけでは終わりません。

「この目的を、この環境の中でどう実現するか」を考える必要があります。

技術は、単独で存在しているのではありません。目的と、条件と、環境の中にあります。

技術は「万能な答え」ではない

技術という言葉を聞くと、私たちはつい、「できることが増える」という方向だけを考えます。

もちろん、それは技術の大きな役割です。しかし同時に、技術には、

「この条件では使える」
「この条件では使えない」

という境界があります。

だから技術を見るときには、「何ができるのか」だけではなく、「何のために生まれたのか」を見る必要があります。

そして、「どんな条件で使えるのか」さらに、「どんな環境では限界があるのか」まで見る。

すると、技術は単なる便利な道具ではなく、人間が目的を実現しようとして、環境との間につくったものとして見えてきます。

目的と手段の間にあるもの

目的がある。その目的を実現するために、技術が生まれる。

技術を使うために、条件を整える。しかし、その条件には環境という限界がある。

そして、その限界に出会うことで、また新しい技術が生まれる。

そう考えると、

目的 → 手段 → 条件 → 環境 → 限界

という一つの流れが見えてきます。

技術は、目的を実現するための手段です。ところが、その手段が長く使われるようになると、やがて手順になり、仕組みになり、当たり前のものになっていく。

そのとき、人間と技術の関係は、最初と同じままでいられるのでしょうか。目的のために生まれた手段は、いつまでも手段のままでいられるのでしょうか。

次回は、そこから考えてみましょう。

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※ この記事は、合同会社正進(メディア事業)の経験と、現場での考察に基づくものです。正進の母体である正進総合保険企画(2004年開業・損害保険代理店)の知見も含まれますが、建設業に関する専門的な技術的助言ではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。

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