建設業を始めたばかりの会社にとって、仕事を獲得することは簡単ではありません。
営業先を開拓し、自社の技術や仕事への姿勢を伝え、ようやく大きな注文の話がまとまる。会社にとっては、大きな一歩です。
しかし、ここで考えておきたいことがあります。注文を獲得できることと、その工事を自社で請け負えるとは、必ずしも同じではありません。
01 営業で仕事を獲得しても、受注できるとは限らない
例えば、創業して間もない建設会社が、住宅建築の仕事を獲得できそうになったとします。営業活動を結び、施主から信頼を得られたとしても、それだけですべての条件が整うわけではありません。
工事の種類や請負金額によっては、建設業許可が必要になります。また、工事を完成させるための技術者、施工体制、資金面の備えなども重要です。
つまり、営業によって仕事の機会を得ても、会社としてその工事を請け負い、最後まで履行できる条件が整っていなければ、受注につながらない場合があります。
仕事を獲得する力と、獲得した仕事を引き受けられる経営基盤は、別々に整えていく必要があるのです。
02 実績が少ない会社は、何を信用の根拠にできるのか
創業間もない会社には、長年の施工実績や豊富な取引履歴がありません。取引先から見れば、どのような仕事ができるのか問題が起きたときにどう対応するのか、安心して仕事を任せられるのかを判断する材料が限られています。
だからといって、実績が少ない会社に信用の根拠がないわけではありません。例えば、次のような情報は、相手が会社の仕事の進め方を判断する手掛かりになります。
- どのような工事に対応でき、何が対応範囲外なのか。
- 工事の条件や不明点を、着工前に確認しているか。
- 変更や問題が発生したとき、関係者に報告し、記録を残しているか。
- 工事の品質や完成状態を、どのように確認しているか。
- 自社だけでは対応できない場合、誰に相談し、どのように対応するのか。
大切なのは、会社を実際以上に大きく見せることではありません。相手が判断するために必要な情報を、具体的に示すことです。
03 「できます」と伝える前に、確認しておくこと
営業の場面では、注文を逃したくないという気持ちから、できるだけ幅広い仕事に対応できることを伝えたくなるかもしれません。しかし、受注した後で必要な許可や技術者、資金、協力会社などが不足していると分かれば、会社にも取引先にも大きな負担が生じます。
そこで、注文の相談を受けた段階で、次の点を整理しておくことが重要です。
- 法令上の条件:その工事を請け負うために必要な許可や資格などを満たしているか。
- 施工上の条件:技術者、作業員、設備、協力会社などを確保できるか。
- 資金面の条件:材料費や外注費などを含め、工事の進行に必要な資金を確保できるか。
- 契約上の条件:工事範囲、金額、工期、変更時の取り扱いなどを明確にできているか。
こうした確認は、受注を諦めるために行うものではありません。自社で直接請け負うのか、他社と協力するのか、工事の一部を担うのか。条件に応じた選択肢を検討するために行うものです。
なお、協力会社として工事を請け負う場合も、工事の内容や請負金額によって建設業許可が必要になることがあります。協力する相手が許可を持っているからといって、自社に必要な条件がなくなるわけではありません。
04 実績は、次の仕事につなげるための記録でもある
実績が少ない会社は、実績が増えるのを待つだけでは、信用を得るための材料をなかなか増やせません。そこで、日々の仕事の中に、次の受注につながる情報を残していくことが考えられます。
例えば、着工前確認事項、工事中の変更内容、問題が発生した際の対応、完成時の確認記録などです。こうした記録は、単なる事務作業ではありません。どのような条件で仕事を引き受け、何を確認し、どのように完成させたのかを振り返る材料になります。取引先に説明できる範囲で整理すれば、会社の仕事の進め方を伝える手掛かりにもなります。
ただし、記録があることと、施工実績や技術力が十分であることは同じではありません。実績や能力を正確に示し、記録と実態が一致していることが前提です。
また、代表者や従業員が以前の会社で経験した工事と、現在の会社としての施工実績は区別して伝える必要があります。取引先名称や工事写真などを公開する際には、必要な許可も確認しましょう。
05 信用づくりは、会社の成長段階を知ることから始まる
若い建設会社に必要なのは、実績が豊富な会社に見せることではありません。現在の自社に何ができるのか。どのような条件が整えば、より大きな仕事を請け負えるのか。その違いを把握することです。
今は自社で直接請け負うことが難しい工事でも、協力会社として経験を積む、施工体制を整える、資金面の備えを強化するなど、次の段階に進むための道筋を考えられます。
そして、営業活動で得た相談や注文機会を、単に受注できたかどうかだけで終わらせず、自社に不足している条件を把握する機会として捉えることもできます。
実績が少ないことは、変えられない過去の事実です。しかし、これからを経験し、何を整え、何を相手に示していくかは、会社自身が考え、行動できることです。
信用を得るためには、実績を示すだけでなく、今の自社ができることと、これから整えるべきことを明確にする。それが、次の仕事につながる信用づくりの出発点ではないでしょうか。
自社の状況を整理するワークシート
記事を読んで「うちの会社はどうだろう」と思った方のために、自社の対応範囲・受注前チェック・信用の根拠を整理するワークシートを用意しました。記入してみると、自分では気づかなかった強みや、まだ整っていない部分が見えてくるかもしれません。
自社の現状を振り返るための3つの問い
- 1. 現在の自社が請け負える工事の種類や規模、その条件を把握していますか。
- 2. 受注前に、許可・施工体制・資金・契約条件を確認する仕組みがありますか。
- 3. 日々の仕事を、次の取引先に説明できる実績や記録として残していますか。
自社の状況を整理した上で、一緒に考えてみませんか
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本記事は、創業間もない建設会社の経営者・営業担当者の方を対象にしています。会社の実情に応じて、専門家への相談も併せてご検討ください。


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