千葉市の建設現場で事故が減らない理由──それは「現場の問題」ではない

リスクと責任

建設現場で事故が起きると、まず現場に目が向きます。

安全確認はできていたのか。
作業手順は守られていたのか。
作業員に問題はなかったのか。

もちろん、そこを確認することは必要です。しかし、そこで話を終えてしまうと、見えなくなるものがあります。

事故が起きる前に、その現場では何が起きていたのか。

そして、もう一つ。

その現場を取り巻く環境そのものが、以前とは変わっていないだろうか。

私は、千葉の建設現場を考えるとき、この二つを切り離してはいけないのではないかと思っています。

千葉の現場は、一つではない

「千葉の建設現場」と一言で言っても、その条件はかなり違います。千葉県は、東京湾と太平洋に囲まれた大きな半島です。

都市部があり、東京湾岸には工業地帯や物流拠点があります。

内陸に入れば、住宅地や農地が広がります。

さらに房総半島の南部へ向かえば、山間部や海岸部が多くなります。

観光地もあれば、農業や漁業など、豊かな地域資源を生かした産業もあります。

つまり、土地が違えば、そこにある産業も違い、産業が違えば建設現場の姿も変わります。

市街地で道路工事をする現場と、房総の山間部で工事をする現場では、周囲の条件が同じではありません。

海に近い現場と内陸の現場。

物流施設の建設と住宅建設。

同じ「建設業」という言葉の中に、実際にはかなり多様な現場があります。

地理の違いは、リスクの違いになる

現場の安全を考えるとき、作業そのものに目が向きがちです。しかし、現場がどこにあるのかも重要です。

道路事情はどうなのか。

資材をどこから運んでくるのか。

周囲にどのような建物や施設があるのか。

地形はどうなっているのか。

雨が降ったとき、水はどこへ流れるのか。

強風の影響を受けやすい場所なのか。

こうした条件は、現場によって違います。

だから、本来は「建設現場のリスク」という一つの言葉だけでは足りないのかもしれません。

土地によって、現場が抱える条件は変わる。そして千葉県の場合、その違いがかなり大きい。

これは、千葉で建設業を営む会社にとって、無視できない特徴ではないでしょうか。

実際の現場を動かしているのは誰なのか

地域の建設現場を見ていると、そこには大手企業だけが存在しているわけではありません。

地域の公共工事や民間工事を担う建設会社があります。その元には、専門工事を担う会社があります。さらに協力会社や個人の職人が加わることもあります。

現場には、それぞれ違う会社の人が入り、役割を分担しながら一つの工事を進めています。そのため、現場で起きることは、一つの会社だけでは完結しません。

情報の伝達。

工程の調整。

資材の搬入。

作業場所の変更。

天候への対応。

他の業者との調整。

一つの条件が変われば、別の場所にも影響することがあります。

現場のリスクは、会社単位ではなく、現場全体のつながりの中で生まれることがある。

ここも見落としてはいけないところです。

「予定どおりに進まない」ことが、現場を変える

建設現場では、計画を立てます。

工程表もあります。

作業手順もあります。

しかし、現場は必ずしも予定どおりには進みません。

雨が降る。

風が強くなる。

資材の搬入が遅れる。

道路事情が変わる。

別の業者の作業が予定より長引く。

作業員の配置が変わる。

一つの変更が、別の変更を生みます。そのたびに、現場では判断が必要になります。

「今日はここまでにするのか」

「別の作業に切り替えるのか」

「予定を変更するのか」

「別の業者との順番を変えるのか」

こうした判断は、必ずしも事故につながるわけではありません。しかし、事故につながる可能性のある条件が増えることはあります。

最近の豪雨を見て、考えたこと

最近の千葉で発生した豪雨でも、私たちは自然現象そのものだけでなく、それによって社会のさまざまな部分が影響を受けることを目にしました。

道路。

交通。

排水。

住宅。

物流。

そして、仕事。

建設現場も例外ではありません。

ここで考えたいのは、「豪雨だから危険だ」という単純な話ではありません。

大雨によって一つの条件が変わったとき、その影響が現場の別の条件にどう波及するのかということです。

道路事情が変われば、資材搬入が変わる。

資材搬入が変われば、工程が変わる。

工程が変われば、人員配置が変わる。

人員配置が変われば、作業の組み合わせも変わる。

このように、一つの自然現象がいくつもの判断を生むことがあります。

事故を見るなら、最後に起きたことだけではなく、そこへ至る過程まで見る必要があります。

「昔は大丈夫だった」が、これからも大丈夫とは限らない

建設業には、経験があります。これは非常に大きな財産です。

「この地域では、この時期はこうなる」

「この程度の雨なら作業できる」

「この風なら問題ない」

そうした経験から得られる判断があります。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみる必要があります。

その経験は、これからの現場にもそのまま当てはまるのでしょうか。

自然環境は変化しています。

気温や降雨などの環境条件についても、これまでの経験だけでは判断しにくい状況が出てくる可能性があります。

だからといって、将来を正確に予測できるわけではありません。

むしろ重要なのは、

「これまでと同じだ」と決めつけないこと。なのではないでしょうか。

千葉の建設業には、「地域を見る力」も必要になる

千葉県は広い。

そして、地域によって地形も産業も違います。

都市部と房総では違う。

湾岸部と内陸部でも違う。

住宅地と工業地帯でも違う。

海岸部と山間部でも違う。

そこに自然環境の変化が重なります。

すると、これからの現場では、

「建設業だから、この安全対策」

という一律の考え方だけではなく、

「この場所、この仕事、この時期だから、何に注意するのか」

という見方が、ますます重要になるのかもしれません。

経営者が見るべきもの、現場責任者が見るべきもの

これは現場責任者だけの問題でもありません。

会社を経営する側にも関係があります。

自社は、どのような地域で仕事をしているのか。

どのような工事が多いのか。

どのような協力会社と仕事をしているのか。

天候や災害によって工程が変わったとき、会社としてどこまで対応できるのか。

そして、現場から上がってくる「少しおかしい」という声を、会社は拾えているのか。

現場責任者であれば、

「予定どおりにいかないとき、どこで判断するのか」

「その判断を誰に相談できるのか」

「協力会社との情報共有は十分なのか」というところまで考える必要があります。

事故を防ぐことは、現場に注意を促すことだけではありません。

会社と現場が、変化をどう捉えるかという問題でもあります。

事故は、突然現場に現れるのだろうか

事故は、ある瞬間に発生します。突然起きたように見えます。

その前には、

小さな判断があり、

小さな変更があり、

小さな無理があり、

小さな見落としがあり、

そして、それらがいくつか重なっているのかもしれません。

だからこそ、「誰のミスか」ではなく、「なぜ、その状況になったのか」

を見る必要があります。

これは責任を曖昧にするという話ではありません。

事故が起きた後に責任を明らかにすることと、次の事故を防ぐために構造を見ることは、別の問題だからです。

千葉の現場を、もっと広く見る

千葉の建設現場を考えるなら、現場だけを見ていてはいけないのかもしれません。

その現場がどこにあるのか。

その土地にはどんな特徴があるのか。

周囲ではどんな産業が行われているのか。

どんな人や会社が関わっているのか。

自然環境はどう変化しているのか。

そして、これから何が変わる可能性があるのか。

そこまで視野を広げて初めて、現場のリスクが見えてくることがあります。

千葉は、都市でもあり、工業県でもあり、農業県でもあり、漁業や観光の地域でもあります。

そして、その多様な地域の中で、多くの建設会社が仕事をしています。

千葉の建設現場は、一つではありません。

だからこそ、事故やリスクを一つの型にはめて考えることもできないのではないでしょうか。

「事故を減らす」より前に、現場を見る

事故を減らすためには、安全教育も必要です。

ルールも必要です。

設備も必要です。

しかし、それだけでは十分ではないのかもしれません。

事故が起きる前の現場を見る。

予定から外れた瞬間を見る。

現場の人が感じた違和感を見る。

そして、その現場を取り巻く土地、産業、自然環境まで見る。

現場を見るということは、作業員を見ることだけではありません。

その現場を取り巻く条件を見ることでもあります。

これからの千葉の建設業を考えるなら、

「昔はこうだった」

だけではなく、

「これから、この現場はどう変わるのだろう」

という問いも必要になるのではないでしょうか。

事故は、突然現場に現れるのではない。

その前から、いくつもの条件が重なり始めている。

その「重なり」を見つけること。

そこから、これからの現場の安全を考えてみても良いのではないでしょうか。

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「チェック欄が埋まっている」ことと「現場が安全である」ことは同じではありません。
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【免責】

※ この記事は、合同会社正進(メディア事業)の経験と、現場での考察に基づくものです。正進の母体である正進総合保険企画(2004年開業・損害保険代理店)の知見も含まれますが、建設業に関する専門的な技術的助言ではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。

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